よく聞かれる質問(Q)とそれに対する当事務所の回答(A)をまとめてみました。
日本における民事訴訟の本質が出ていて,参考になると思います。回答には若干不正確なところもありますが,分かりやすさを優先したので,あまり突っ込まないで下さいね。
Q1.訴訟提起する場合(原告側)の注意点は何ですか?
- 契約不履行を理由として損害賠償請求の裁判を起こそうと思っています。相手が裁判を全く無視した場合はどうなるのですか。
- 守谷中央法律事務所(以下当事務所)
- その際は,相手方(被告)が当方(原告)の請求原因事実を争わなかったものとして,基本的には,請求とおりの判決が下されることになります。
- とにかく裁判に勝てば,相手は賠償金を払ってくれますよね?
- 当事務所
- う〜ん,そうだとよいのですが・・・。ある統計によれば,判決に従って被告が任意に支払うのは全体の30%台という話を聞いたことがあります。。
- え〜っ,そういうものなのですか? 支払がないときは,どうするのですか。
- 当事務所
- 相手に財産があれば,判決に基づいて差押え等の強制執行を行います。
- その費用は別にかかるのですか。
- 当事務所
- はい,そのとおりです。
- 相手に何も財産がないときはどうするのですか。
- 当事務所
- 相手が個人の場合は給料の差押え等も検討しますが,本当に何もない場合はどうしようもありません。
- 罰金が払えないと,労役場に留置する制度があると聞きました。
- 当事務所
- それは刑事事件の場合で,民事事件についてはそのような制度はありません。
- 訴訟提起のために依頼した弁護士費用は,相手から取れるのですか。
- 当事務所
- 契約不履行を不法行為構成にできない場合は,原則取れないと考えた方がよいです。
- でも,訴状に「訴訟費用は被告の負担とする」と書くそうではないですか。
- 当事務所
- その場合の訴訟費用で典型的なものは,訴状に貼る印紙代で,弁護士費用までは含まれていません。
- それでは,相手に財産がない場合は,訴訟をやる意味がありませんね。
- 当事務所
- う〜ん,問題の本質を突いていますね。まず,一般的に言って,訴訟という手段が,常に問題解決の最善の手段であるとも言えないので,よく考える必要があります。また,訴訟提起する場合は,相手に財産があるかが極めて重要です。日本においては訴訟相手の財産を開示させる仕組みが充実すれば,訴訟件数はもっと増えると予想されます。
- 訴訟を提起すると,必ず裁判所が判決を出すのですか。
- 当事務所
- 裁判官がシロクロをはっきりさせる判決ではなく,双方が歩み寄る和解というかたちで終わることも多いです。先ほど司法統計の話をしましたが,和解の場合だと,相手が任意に支払うのは60%台になるそうです。
- 和解で解決する場合でも,必ずしも相手方がそれに従って支払うわけではない,ということですか。
- 当事務所
- 残念ながら,そういうことになります。
- 私の場合,契約書とかはなくて全て口約束なのですが,証人がいますから大丈夫ですよね?
- 当事務所
- 相手が,約束なんてしていない,と言ったらどうしましょうか…?相手が契約の存在を否定した場合,契約が存在することは,裁判を起こす側が証拠を出さなければならず,証拠が出せないと,そもそも契約は存在しなかったと認定される可能性があります。
- えっ,そういうものですか?でも,信頼できる友人が証言してくれるから大丈夫です。
- 当事務所
- 相手が,やはり自分の友人を出してきて,契約はなかったと証言させたら,どうしますか。
- 相手がウソを言っているのは明らかなのだから,そのような話になるわけないでしょう。裁判官がウソつきを信用するとは思えません。
- 当事務所
-
たしかにあなたから見れば相手がウソを言っているのは明らかなのでしょう。でも,契約書もなくて,片方は契約があると言い,もう片方は契約はなかったと言ったら,裁判所はどう判断するのでしょうか・・・。先ほどお話ししたとおり,契約の存在は,それを主張する側で証明しなければならないのが原則ですので,裁判所から見て真偽不明状態であれば,そういう契約はなかったと認定される可能性があります。
- そういうものなのですかね…。そうすると,やはり,紙の形になった証拠が重要ということですか。
- 当事務所
- はい。署名・押印のある文書は,その人がその文書を作成したというだけでなく,本心で作成したということまで推定されてしまうから,尚更です。
- 「推定」とはどういうことですか。
- 当事務所
- 平たく言うと,そうではないと否定する側が証拠を出せない限りは,その文書は,署名・押印した人が,その文書内容に関しては本心で作成したと認定されるということです。
- よく分かりました。訴訟提起しても大丈夫か,今一度考えてみます。
- 当事務所
- そうですね,以上ご説明したとおり,相手方の財産状況や,証拠が揃うかという点を中心に,よく考えてみて下さい。