借金問題の解決の一つの方法ではありますが,破産や任意整理に比べると,認知度が低いと思われる個人再生手続について,その注意点をQ&A形式でまとめてみました。他のページと同じく,分かりやすさ優先なので,回答が若干不正確なのはお許し下さいね。
Q5.個人再生とはどのような手続ですか?
- 個人再生手続とは,どのような手続ですか?
- 守谷中央法律事務所(以下当事務所)
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簡単に言えば,借金全額は返済できない状況にある個人が,自らの負債・資産状況を裁判所に申し立てて,法的手続として,債権者が債権カットに応じる決定を出してもらう制度です。カットされた債権について,3年(36回)〜5年(60回)で分割弁済を行います。破産のページでもご説明したとおり,小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。自営業者の方は原則前者のみになりますが,サラリーマンの方は,前者,後者何れの申立も可能です。
- 分割弁済を行うという点では,弁護士や司法書士が行う任意整理と共通していますが,どこが違うのですか?
- 当事務所
- 任意整理は,いわば債権者と債務者の交渉ですから,債権者が応じなければそもそも成立しません。また,任意整理の場合,ほとんどは利息部分のカットまでで,元本部分のカットは難しいのではないかと思います。遅延損害金も含めて元利金一括返済でなければ和解に応じない,という貸金業者もいます。これに対し,裁判所による法的手続である個人再生は,元本カットが前提となり,手続自体が成立すれば,反対していた債権者(後述参照)に対しても,元本カットしてもらうことが可能となります。
- 借金からの解放という点では,全面的に免れる破産の方が有利なのではないですか?
- 当事務所
- 確かに金銭面ではそういうことになります。しかし,(1)「破産」自体に心理的抵抗がある場合,(2)破産した場合に職業上の欠格事由が問題になる場合,(3)破産免責不許可事由がある場合,(4)住宅ローン債務があるが住宅は守りたい場合には破産できないので,ここに個人再生という制度の実益があります。特に,住宅ローン債務の不履行が続いて,既に期限の利益を喪失していたり,あるいは,保証会社による代位弁済が行われてしまうと,債権者の同意がない限り,住宅ローン債務を元の状態に戻すには,個人再生手続に頼らざるを得なくなります。
- 小規模個人再生と,給与所得者等再生とは,どこが違うのですか?
- 当事務所
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いろいろありますが,弁済額については,小規模個人再生は,(1)債務額の一定割合(債務額に応じて異なります)は最低でも弁済しなければならず,また,(2)原則として債務者が有する財産額以上は弁済しなければなりません(破産の場合は全財産を供出するため,それとのバランスを図るためです)。そして,実際の弁済金額としては,(1)(2)の数字の大きい方ということになります。給与所得者等再生は,以上の2つの条件に加えて,(3)1年分の可処分所得の2倍以上,という条件が加わり,(1)(2)(3)の最も大きい金額を弁済します。
- 具体的には,どれくらい金額が異なるのですか?
- 当事務所
- あくまで一例ですが,債務額約450万円(住宅ローンを除く),年収約450万円のサラリーマンの方の場合,小規模個人再生だと100万円(法律で定められた最低額)ですが,給与所得者等再生では約450万円になったという試算結果があります。
- そうだとすれば,小規模個人再生の方が弁済額は少ないので,サラリーマンであっても給与所得者等再生は選択せず,小規模個人再生を選択することになりますね。
- 当事務所
- たしかにそのとおりです。司法統計的にも,全体としてみた場合,小規模個人再生の方が,給与所得者等再生より,はるかに多い件数だったような記憶があります。しかし,問題はそう簡単ではないかもしれないのです。
- というと?
- 当事務所
- 個人再生手続は,再生計画案(個別債権者に対する毎月の弁済額を決めたもの)について,裁判所の認可を受ける必要があるのですが,その際,給与所得者等再生では,債権者の決議は不要ですが,小規模個人再生では,これが必要になります。具体的には,総債権者数の過半数が反対,または,反対した債権者の債権総額が,債権総額の2分の1を超える場合は,認可決定が下りないのです(逆に言えば,反対が少なければ,認可決定が下りた場合,反対した債権者もその決定に従わなければなりません)。もし,個人再生手続を維持したいのであれば,いったん小規模個人再生の申立を取り下げて,あらためて給与所得者等個人再生の申立を行わなければなりません。
- 反対する債権者などいるのですか?
- 当事務所
- インターネット上では,特定の大手企業(複数あります)から反対を受けたという事例が報告されています。しかし,事実か否か確認できません。現に,当事務所では,その債権者を含む個人再生申立事件を取り扱っておりますが,その債権者から反対は出ませんでした。ただ,上述のとおり,給与所得者等再生の方が弁済を受けられる金額が多くなるということであれば,反対する債権者が出てきても不思議ではありませんね。
- 個人再生の概要についてよく分かりました。有り難うございました。